
□●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●□
SE,PGのためのヒューマンスキル vol.21
ネ┃ゴ┃シ┃エ┃ー┃シ┃ョ┃ン┃編┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
〈ネゴシエーション編 目次〉
★第1話 「 交渉の本当の目的 」
■ 第1話 ■
∞~∞【 2009年8月19日 (水) 発行 】∞~∞
□●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●□
今回からは、前回までのコミュニケーションをベースとして、
「ネゴシエーション」=「交渉・提案」をテーマに考えていきたいと思
います。
ここで扱うネゴシエーションは主として対社内的な場面です。
つまり、対顧客との品質・価格・納期を始めとするあらゆる条件に関す
る交渉です。
ネゴシエーションで重要なことは「相手の得を得け」ということです。
他にも重要なことはありますが、優先順位は下がります。
これに対して、対社内的に集団をまとめ一つの方向に向かう場面を扱
うのがリーダーシップです。これについてはバックナンバーをご覧くだ
さい。
http://www.saycon.co.jp/magazine/leadership/
◆交渉の本当の目的
皆さんはネゴシエーションは好きでしょうか?それもと嫌いでしょう
か?
研修の冒頭でこのように質問すると約7:3の割合で“嫌い”という
方のほうが多いです。。
では、なぜ、われわれはネゴシエーションが嫌いなのでしょうか?
●交渉の目的は“きょうそう”である
われわれが交渉が嫌いになる理由。それは交渉の持つ
“競争”的側面ではないでしょうか?
たとえば問題です。
ここに1つのパイがあり、これをAさんとBさんの2人で分けるとし
ます。あなただったらどのように分けますか?
「真っ二つに分けるというのが公平でいいんではないでしょうか?」
では、Aさんがもっと欲しいと思った時にはどうなりますか?
「Bさんの取り分が減りますね。」
では、Bさんにもっとあげたいときには?
「Aさんの取り分が減りますね。」
このような状況を表す言葉にゼロサムゲームがあります。
ゼロサムゲームとは、「自分の得は相手の損、自分の損は相手の得」で
あるということです。
つまり、“競争”的な状況です。
ITベンダーとITユーザーの関係においてもこういう事は良くあり
ます。
例えば、ベンダーが高い価格で受注を獲得することはユーザーにとっ
ては予算を圧迫することになります。
仕様変更をいつまででも受け付ける事はユーザーには都合が良いこと
かもしれませんが、ベンダーは予算超過で赤字プロジェクトとなってし
まいますね。
「しかし、それはある意味当然ではないですか?」
いいえ決してそうではありません。では、続けて問題です。
----------------------------------------------------------------
問題
ここに1つのパイがあり、これをあなたとわたしの2人で分けるとし
ます。相手の取り分を減らさずに、自分の取り分を増やすにはどうした
らいいですか?(制限時間1分)
----------------------------------------------------------------
「それは無理でしょう!」
いいえ、単純に考えてみてください。
「そうか!パイを大きくしたらいいですね。」
そうです。二人で協力してパイを大きくしたらいいですね。
そうすれば相手の取り分を減らすことなく、むしろ相手の取り分を増
やしつつ自分の取り分を増やすことができますね。
つまり交渉には一方で自分の取り分を増やしつつ、相手の取り分を増
やすこともできるのです。
これは、プラスサムゲームという言葉で表現できます。
プラスサムゲームというのは「相手の得は自分の得」となる状況のこ
とです。
ITベンダーはITユーザーにとって単なる一業者ではなく戦略パー
トナーであるべきだと私は信じています。
“競争”ではなく一種の“共創”関係にあるわけです。
「交渉の目的はユーザーとベンダーが共同でより良いシステムを作るこ
と」にあるわけです。
我々がえてして交渉が嫌いになってしまう原因は、交渉を“競争”と
捉え“共創”と捉えないことにあるのではないでしょうか。
■鉄則:交渉とは○○であると心得よ!
----------------------------------------------------------------
●交渉の目的は大所高所から捉える
「しかし、そうは言ってもつい勝ち負けで交渉結果を考えてしまう自分
がいます」
ゲーム理論をご存じでしょうか?近年最もノーベル賞経済学賞を出して
いる理論ですから聞いたことがあるという方も多いと思います。ゲーム
理論のエッセンスは、囚人のジレンマという例えを使って説明されるこ
とが多いのでここでもその例えを使って説明します。
A,B二人の銀行強盗が捕まりました。警察は二人が口裏を合わせない
ように別々の留置所に入れてこう言います。『もし、おまえらが2人と
も黙秘したら、2人とも懲役2年だ。だが、一方だけが自白したらそいつ
は刑を1年に減刑してやろう。ただし、共犯者の方は懲役15年だ。もし
も、おまえらが2人とも自白したら、2人とも懲役10年だ。』と。
このときA,Bのそれぞれには共犯者と協調して黙秘すべきか、それと
も共犯者を裏切って自白すべきか、という2つの選択肢があります。
この関係を表に纏めると以下のようになります。
┌─────┌────────┌────────
│ │ A 協調 │ B裏切り
├─────├────────├────────
│A 協調 │(2年、2年) │ (15年、1年)
├─────├────────├────────
│B 裏切り │(1年、15年) │(10年、10年)
└─────└────────└────────
表の見方:(Aの刑期、Bの刑期)
自分だけ助かりたい一心で裏切り、双方が自白してしまうことで二人合
わせて20年の懲役生活になってしまうというのが囚人のジレンマの結論
です。上記の表から明らかなように、合理的な答えは二人とも協調して
黙秘を通すことです。(左上の象限で二人合わせて4年の刑期で済む)
交渉を競争と捉えてしまうと囚人のジレンマに陥ってしまうのです。
●話し合いの重要性
この囚人のジレンマの例は私達にもう一つのことを教えてくれています。
それは、「話し合いの重要性」です。今回の事例でもA,B二人が連絡
を取り合い、話し合うことができたなら、お互い黙秘を通し、合計4年
の刑期で済むことも可能だったのです。
■鉄則 交渉では徹底的に○し○う!
そしてその話し合いに望むときに重要な原則があります。それは、交渉
の目的を低く捉えずに高く捉えるということ。狭く捉えずに広く捉える
ということです。そうすることで共通の利益がみえてくるので、パイを
ふくらませる交渉が可能となるのです。
「あと数%高くしてもらう/安くしてもらう」
のように小さく、低く設定するのではなく、
「お互いが成長するため/この苦難を乗り越えるため」
といった大所高所からの目的を設定することです。
呉越同舟という故事がありますね。
昔の中国で、呉と越は隣国の常として大変仲が悪かったそうです。しか
し、両国の人が同じ舟に乗り合わせていた時、暴風に襲われ舟が転覆し
そうにったとき、舟が沈まないよう互いに助け合ったという故事です。
仲が悪い者同士でさえそうなのですから、ベンダーとユーザーも共通利
益の前では協力し合えるのではないでしょうか?そして交渉においては
常にそのような共通利益を念頭に置とよいのです。
「その目的は公言するのでしょうか?」
交渉における話し合いの最中で、口に出すことで共通認識を深めるのも
良いでしょうし、あらためて口に出さなくても言外にそれを匂わすとい
うのも良いでしょう。
いずれにせよ、交渉の目的を正しく認識することが、交渉の第一歩なの
です。
「道が間違っていたら走ってもしょうがないというわけですね」
そしてこの交渉目的を広く、大きく捉えることは後ほどお話しする「逆
提案」で生きてくることになるのです。
■鉄則 交渉の目的は○所○所から考えよ!
交渉には“目的”と同時に“目標”が必要になります。
次回は交渉の“目標”の重要性について考えていきましょう。
〈今回のまとめ〉
■鉄則:交渉とは共創であると心得よ!
■鉄則 交渉では徹底的に話し合う!
■鉄則 交渉の目的は大所高所から考えよ!
〈ネゴシエーション編 目次〉
★第1話 「 交渉の本当の目的 」