これから、ある生徒の20回分の小テストを担当してもらいます。 あなたの目標は、生徒の点数を50点以上(合格点)にさせることです。 毎週テストが終わるたびに、その点数が表示されます。 あなたはその結果を見て「褒める」「叱る」「何もしない」のいずれかを選択してください。
今回のテストの点数は...
どうしますか?
20回のテスト指導、お疲れ様でした。
体感として、生徒の点数を50点以上にするのに最も効果があったのはどのアクションでしたか?
実は、あなたが取ったアクション(褒める・叱る)は、生徒のテストの点数に一切影響を与えていません。
生徒の点数は、シミュレーション開始前にすべてランダムに決定されていました。
では、なぜ「叱る方が効果的だ」と感じた(かもしれない)のでしょうか? それが「平均への回帰」と呼ばれる現象です。
極端に悪い点数(赤点)の後は、統計的に次は平均(このシミュレーションでは約50点)に近いマシな点数が出やすくなります。逆に、極端に良い点数(高得点)の後は、次は平均に近い、少し悪い点数が出やすくなります。 そのため、「点数が悪い生徒を叱る→次の点数が上がる」「点数が良い生徒を褒める→次の点数が下がる」という見せかけの因果関係が生まれ、多くの人が「叱る方が効果がある」と錯覚してしまうのです。
元の心理学実験でも、参加者の約7割が同様の結論に至りました。この認知バイアスは、誰にでも起こりうるものです。